歯周病の二つの治療法

歯周病の治療は、短期間で終わるものではありません。長い時間をかけて治療に取り組む必要があると思います。しかし、長い間、歯科医院に通院し続けるの面倒だし大変です。治療の途中で通院をやめる人もいることでしょう。また、もっと簡単に治せる方法を教えてほしいと思う人もいるかもしれません。

歯周病の基本的な治療の進め方は、大きく次の2種類に分類されます。一つ目は、歯周基本治療です。これは、歯周病の原因を一つでも多く取り去ること。プラークコントロール、スケーリング、ルー卜プレーニンク、歯垢を増加させる因子の修正、かみ合わせの調整などをのことを指します。これらは、すべての歯周病患者に行うものとされているそうです。

二つ目は、歯周外科治療です。基本治療を行っても深い歯周ポケットが残っている場合に行われます。また、歯周病によって歯周組織が破壊されているケースもあります。このケースでは歯周組織を再生する歯周外科による治療(手術)が行われることになります。

この時に重要なのが、患者の意思です。たとえ手術が必要な状態だとしても、患者が拒否すれば手術ではない妥協的な処置をせざるを得なくなるからです。歯周病の治療には、患者に治療方針を明確に伝えること、そして理解を得ることが重要だと思います。しかし、歯科医院の数が少ない地域では、むし歯治療に時間を取られて歯周病の治療が十分にできない場合もあるそうです。患者が歯周病の基本的な治療を知っておくことも必要かもしれません。

歯垢とは

歯垢(プラーク)という言葉を聞いたことがあっても、具体的にどのようなものか説明できる人はあまりいないでしょう。歯垢とは簡単に言うと、口内で繁殖した細菌が水に溶けにくいネバネバした物質とともに歯の表面についたもの。細菌のかたまりと言ってもいいかもしれません。

歯の表面や歯と歯の間に、白いネバネバしたものがついていたら、それが歯垢です。歯垢は歯にくっついているため、口をすすぐだけで取り除くのは難しいです。ですが、歯みがきをすれば、歯垢を取り除くのは難しいことではありません。

歯垢を放ったらかしにしておくと、唾液に含まれるカルシウムやリンと結びついて石灰化していき、歯石になってしまいます。歯石の表面は軽石のようにザラザラしているため、そこに歯垢がつきやすくなり、歯周病の原因にもつながるといえます。

ここまでくると歯ブラシは取り除くことが難しくなります。歯科医院へ行き、歯科医師や歯科衛生士による専門的な歯石除去を受けなければならないでしょう。歯石除去にはスケーラーという名の器具を用い、歯の表面や歯ぐきの内側についた歯垢や歯石を取り去ります。この歯石除去は、歯周病の初期治療としても重要だと考えられています。

歯石除去の方法にはいくつかあり、前述の「スケーリング」のほかに、キュレットと呼ばれる器具で歯肉縁下の歯石を除去し、歯垢などで汚染された病的なセメント質を除去して歯根面を滑らかにする方法があるそうです。

歯周ポケット

歯(歯根)と歯肉(歯ぐき)の間にできる溝のことを歯周ポケットと呼びます。健康な歯ぐきの場合、歯と歯肉が密着しているので、溝はあまりありません。一方、歯周病の場合は歯ぐきが腫れるため、歯肉が盛り上がって歯から離れてしまいます。すると、自ずと歯周ポケットの溝が深くなっていくというわけです。

歯周ポケットは歯周病予防にとっては大敵だと思われます。なぜなら、歯周病原細菌は空気を避けてポケットの中に入り込み性質があるからです。細菌がポケットに入り込むということは、炎症が歯肉の奥深くまで広がることでもあるといえるでしょう。そして、さらにポケットは深くなり、歯肉炎から歯周炎へと悪化してしまうのです。したがって、歯周ポケットの深さをみれば、歯周病の進行度がある程度わかると思います。

歯周ポケットの深さを測る器具のことを「ポケットプローブ」といいます。ポケットごとに深さは異なるため数カ所のポケットの深さを測定するのが一般的です。

歯周病で歯を失わないためには、とにかく早期に発見・治療することが重要です。したがって少しでも歯ぐきに異常を感じたら、すぐに治療に取り掛かるのが良いでしょう。歯ぐきが赤く腫れたり、歯みがきのときに出血したりする程度でも歯周病を疑ったほうが良いかもしれません。自分で気づけるかどうかわからないという人は、歯科医院で定期的に検診してもらうのも良いと思います。そうすれば、早期発見・早期治療につながる可能性が高くなるでしょう。

歯周病治療のポイント

「歯周病」とは、歯を支える歯周組織に起こる病気の総称のことをいいます。そして、段階によって病名が変わります。

まず、歯肉に炎症が起こっている段階は「歯肉炎」と呼ばれます。歯肉炎が進行し、歯を支える歯槽骨まで炎症が及ぶと「歯周炎」と呼ばれるようになります。言い換えると、歯肉炎と歯周炎の病名の違いは、歯周病の進行度の違いと同じ意味だととらえて差し支えありません。初期の歯周病であれば歯肉炎、進んだ歯周病が歯周炎です。

歯科医院に行った時、歯肉炎と診断されたからといってまだ初期の状態だと安心してはいかないと思います。なぜなら、逆に言えば治療しなければ歯周炎に進行してしまうという意味でもあるからです。現在、歯周病を治すために大切なことは早期の発見と早期の治療だと考えられています。その理由は、歯肉炎の段階で発見できれば、歯みがきだけで治せる望みもあるからです。しかし、もし歯周炎まで悪化してしまった場合、大掛かりな治療が必要になることも考えられます。歯肉を切除したり、歯肉を剥離して歯の根元に付着した歯石をとったりするなどの治療です。最悪の場合、抜歯が必要になることもあるといいます。

こうならないためにも、歯肉炎の段階での発見と治療が不可欠だとされているのです。歯ぐきの腫れやぐらつきを感じた場合は、早めに歯科医院で診察してもらうことをおすすめします。歯を失う最悪の場合を想定すると、忙しいからと言って歯科医院に行くのをためらうこともなくなるのではないでしょうか。

妊婦と歯周病の関係

低体重児を出産した母親と、正常体重児を出産した母親の歯周病の進行度を比べてみると、低体重児を出産した母親のほうが、歯周病が進行していることが多いそうです。最近は、歯周病と低出生体重児や早産との関連が注目されています。

この原因として、歯周病で炎症が起こったときに増える物質が疑われています。この物質は早産ではない出産時にも分泌されます。子宮筋を収縮させて出産しやすくする効果があり、陣痛促進剤の成分としても知られているそうです。

しかし、この物質が歯周病で増えることによって血液中にも多くなり、胎児の成長に影響を及ぼしたり、子宮筋を収縮させて出産の時期を早めたりしてしまうのではないか見られています。

妊娠しているからといって、歯周病の治療ができないことはありません。妊娠中に非外科的な歯周病の治療を受けて早産を引き起こす原因にはならないという調査報告もあるそうです。ただし、治療をするのは安定期に入ってからのほうがよさそうです。

また、喫煙は歯周病に対しても最も大きな危険因子と考えられています。しかも、タバコをすう本数が多ければほど、歯周病にかかりやすい傾向があるらしいのです。タバコにはニコチンなどの有害物質が含まれており、この有害物質が血管を収縮させて血流が悪くなってしまいます。血流が悪くなると、歯肉や歯に行き渡る栄養が不足していき、細菌に対する抵抗力が低下するおそれがあります。したがって歯周病の最大の原因と考えられているのです。

歯周病菌と生活習慣病

歯周病菌は口の中だけでなく、血液中に入り込んだり、のどから飲み込まれたりすることもあるため、全身の病気と関連がありのではないかと考えられていました。近年、歯周病が肥満や糖尿病、動脈硬化などのメタボリックシンドロームに関係する生活習慣病のリスクを高めることがわかってきたそうです。

メタボリックシンドローム原因とされているのが、おなかの中につく内臓脂肪です。歯周病で強い炎症になっている歯周組織に存在する物質は、内臓脂肪からも分泌されるといいます。つまり、歯周組織にあるその物質が血液中に入ると、内臓脂肪から分泌されるものに加わってメタボリックシンドロームの悪化につながると考えられているということです。

また、この物質は血糖を処理するインスリンの働きを悪くするというものでもあるようです。したがって、歯周病の人は糖尿病が悪化しやすいことが考えられます。

糖尿病の人は歯周病になりやすく、重症化しやすいことが注目されています。糖尿病は合併症が多い病気としても知られ、歯周病も糖尿病の合併症の一つと考えている歯科医もいるそうです。糖尿病の場合、身体の抵抗力が低下しやすくなり、口の中も同様に抵抗力が下がります。そのため、歯周病菌に感染しやすく、血管ももろくなっているので、歯ぐきの炎症につながりやすいといえます。

また、歯周病菌は血管内に入ると、動脈硬化が始まるともいわれています。実際、動脈硬化のある冠動脈から歯周病の細菌が見つかったというレポートもあるそうです。

塩入り歯みがき

高齢者の中には、歯みがき粉がなかった時代は塩でみがいていたと話す人がいます。もともと、塩で歯を磨くのは中国の風習であったといわれていますが、日本にも仏教の伝来とともにこの風習が伝わったのではないかと考えられています。そう考えると、塩は長い間、歯みがき剤としても身近な存在だったといえます。

細菌、塩入りの歯みがき剤が人気を博しているようです。インターネットの口コミなどでも、歯周病予防として塩入り歯みがき剤を使っている人の体験談などが多く見られるようになってきました。

実際、塩には若干の殺菌効果や唾液分泌効果があると考えられています。水分も吸収するので、歯肉が引き締まったように感じられるのかもしれません。しかし、塩自体には、血液の循環をよくする効能や、歯周病を改善する作用はないといわれます。塩入り歯みがき剤をあまり過信しすぎるのもよくないと思います。

また、粗塩などでみがくと、歯周病の予防どころか歯ぐきを傷つけるおそれもあります。歯周病予防を宣伝している歯みがき剤には、歯垢(プラーク)を分解する酵素などが含まれる物が主流のようです。しかし、一般的な歯みがき剤は効果が穏やかな医薬部外品なので、薬としての効果はそこまで期待できないでしょう。

一方、洗口剤(デンタルリンス)は殺菌や口臭予防の効果が期待できますが、使いすぎには注意。口の中が乾燥して、口臭がひどくなることもあります。

歯みがき剤や洗口剤はあくまで補助的なものだと考えましょう。